インタ―ネット検索エンジンに好かれる為には?

 第十一話 超大手インタ―ネット検索エンジンに好かれる為には? 

後日、田中健と柳井幸喜と藤山遊の3人は業者に頼らず自分たちの力で、お店の認知度や集客の対策・改善出来るように、田中健が見つけたヒントを知っていそうな人をアポを取って訪ねた。北海道神宮近くの緑多い閑静な円山の住宅地の中にひと際お洒落で目立つデザイナーズビルにその人のオフィスはあった。顧問契約するしないに関わらず、初回は無料相談である。  

 ビルに入りインターホンを押す。「本日アポイトメント取っていた田中です」「どうぞ中へお入りください」中から出てきたのは感じのいい男性だった。中に入り軽いあいさつの後名刺を交換する。名刺には廣瀬岳(ひろせがく)とある。  
   
 席に着き廣瀬がまず話し始める。意外にも、よくありがちな検索順位上位表示サービス業者の営業マンがいうような話はほとんど言わなかった。 

 廣瀬は大まかな、大手検索エンジン3つの仕組みを話した後、一人づつ個別に、今後の展開など3人に様々なリスニングをしていく。 
 田中健、藤山、柳井はそれぞれの想いや目標を話していく。廣瀬はそれを真剣に聞く。 

 そして、柳井が聞きたいのは集客を含めた、お店のホームページの改善だ。  
   
 柳井は、密かに自信があった。いつも店のパソコンで「札幌 東区 美容室」で検索すると美容室ビーアンビシャスは上位に来ていたからだ。  

 いくつかの質問のやり取りの後、廣瀬はおもむろに大手検索サイト【ググーレ】の右上の・が縦に三つ並んでいる箇所をクリックしシークレットウィンドウを開くと「札幌 東区 美容室」と入力する。 

「廣瀬さん! シークレットモードって何ですか?」  
「柳井さんのパソコンで、ググーレで札幌東区美容室と検索すると美容室ビーアンビシャスは上位に来ませんか?」  
「はい、1ページ目に来ますので、勝手にやったーうちの店検索順位上位だと喜んでいました」  
「そうなんです。ググーレは、そのパソコンの使用者の検索の利便性を高めるために履歴やキャッシュ、cookie等を基に、よく見るサイト等を上位に表示してくれるんです」  
「え? じゃあ僕のパソコンだけで、検索順位1ページ目だったという事ですか?」  
「そうなんです! シークレットウィンドウで今現状の順位を調べて見ましょう」  
 廣瀬はそういうと、WEBブラウジングしていく。1ページ目…2…3……6……13……「まだ出てきませんね」  
「ありました!」【美容室ビーアンビシャスホームページ】という検索結果が表示される!  


「24ページ目‼‼」 


「ダサッ‼ヘボッ‼廣瀬さん、うちの店マジ雑魚じゃないですか」 

「美容室のサイトとしてのデザインは、全然悪くはないと思いますよ。ただ作ってからかなり経つのに、いまだ24ページ目という事はググーレに全くサイトとしては評価されていないという事になりますから、ちょっと原因を見て見ましょう」 

 廣瀬はそういうと、どこを押したのか別のウィンドウを開き、アルファベットの羅列のような画面を見ていく。 
「なるほど、なるほど……これは、かなり改善しなければならないですね」 

「廣瀬さん! その改善とは素人の僕が操作覚えて出来るものなんですか?」 
「はい! できますよ。時間はかかりますがきちんとググーレに評価され認知されるサイト作りをすれば、明日からすぐには無理ですが長期的に見れば必ず順位上がっていきますよ」 
「廣瀬さん! 来月からすぐにお願いします! 教えてください! めっちゃ勉強します!」  
  
 柳井は即決した! 廣瀬と会ってみて話をして、「この人から、教わりたい!」強くそう思ったからだ。 

 なぜなら、廣瀬には今までお店に営業来て、実際に話聞いた他の検索上位表示サービス業者や、ホームページ制作会社とは全く違う、知識だけじゃなく自分で一からサイト作り、一から叩き上げでやってきた、生身の本物の成功失敗経験を経てここまで来た人だと感じたからだ。 

 翌月から、柳井は月二回廣瀬にお店に来てもらい、廣瀬のアドバイスを基に自分の手でホームページ改善作業をしていく。わからないことは廣瀬に聞きつつ、なるべく柳井は自らの手で作業していく。 
 柳井は高校がパソコン系の授業もある情報処理科出身だったのでパソコンは使える方だ。 
 時にはほとんどしゃべらずに黙々と二人で、19時から深夜0時まで作業に没頭する。 
 二人の空間は静謐ながらも、熱いエネルギーがぶつかり合って燃えつつも、研ぎ澄まされた集中力に満ち溢れた空間であった。 
  
 しかし、毎回出てくる改善作業は、膨大な量であった。文章改善、画像改善、ページレイアウト改善、その他にも沢山。 
 廣瀬のアドバイスは一貫している。ググーレに評価されるのも大切だが、来訪者が読みやすいサイト作りをする。 
  
 月二回廣瀬が来る日までに、前回の課題を終わらせる。柳井が決めた自分への課題だ。 
 そのためには、2時、3時まで一人残業し作業を行う事もあった。 
  
 だが、柳井は廣瀬の手は借りず、自らの手で毎日作業する。 
 かつて廣瀬がやってきた事と同じような事をしなければ、自分の技術にならないと思ったからである。 
 お金かければ、こんな大変な作業をしなくても検索順位は買える。 
 しかし、柳井が欲しいのは、順位でなく自分で改善出来るようになる技術と知識である。 

 廣瀬という師匠のいる高みへ上るには師匠がやってきた努力と同じことを自分もしていかなければならない。 
 芸事や伝統工芸・伝統芸能の世界では当たり前のことである。改善作業をやっているうちに、これもパソコンを用いた技術と職人の技だな! ふと柳井は思った。 

 努力が実り、1年後には検索順位は2~4ページ目になっていくが、まだまだ歴史も浅いサイトである。改善の努力を続けなければ、すぐに評価は落ちてまた下がっていく。 
 しかし、ジワリとだが着実に効果が出てきている事を感じる。ふと、柳井はPOSレジの新規客数推移に目を向ける。新規が増えてきた気がする……大手美容室検索サイトのプランを下げて一時期は新規客数が月20人前後に落ちたこともあった。しかし、再び新規客数は40~50人をまた超えだすようになっていく。