スパニスト試験本番で札幌4人衆大ピンチ‼

第五話 いざ!愛知へ! スパニスト試験本番で札幌4人衆大ピンチ‼

弾丸ツアーのスパニスト講習を終え、柳井達は持ち帰ったスパニスト講習の資料を基に、3か月後の試験本番に備え各々勉強に励んだ。スタッフや家族で実技を練習し工程を覚えていった。そこはやはり数々のシャンプーや美容技術を行ってきた美容師である……実技はすぐに頭に入り、スタッフや家族にも「気持ち~いっ♪」とすぐに絶賛された。

 美容師はアシスタント時代にシャンプーを徹底的に鍛えられているので、素人よりは力加減などはもともと上手い。
 しかし、それだけではなく愛知でスパニスト実技担当の先生から習った事である「特にスパニスト実技で大事なことは、行程を覚えることはもちろんだが、施術する相手の呼吸を見ての移動と力のタイミング、筋繊維、筋膜の硬さや弾力感やハリなどを自らの手を通して判断し的確な力加減とスピード、次の行程へ移動するときの手の所作が大事である」というアドバイスを元に4人はメキメキと上達し4人で集まって実技練習すれば「うちら、結構上手いですよ」と励ましあった。

 問題は、学科である。髪や頭皮の知識はそれなりにあるが、スパニストの学科試験は栄養学やアーユルヴェーダの事も範囲に入っている。愛知の講習で勉強した際はインプットする聞き側なので面白く為になったが、試験で自分がアウトプットする側に周るとなるときちんと覚えなければならず苦戦した。

 まだ、頭皮の脂漏性皮膚炎の原因とは? と聞かれれば、普段の仕事とリンクして、すらすらとシャンプーが~生活リズムが~等答えられるのだが、亜鉛不足は~や、βカロチンやリコピンの~とか、セロトニンが~になると、栄養学の分野になり少し頭に入りづらい。

 それ以上にアーユルヴェーダの分野になると、アーユルヴェーダにおいてすべての病気の要因はドーシャのアンバランスが~、風気質のヴァータの方は~で、それによりドーシャが増え~、ピッタ体質の人は~、シロビャンカオイルを用いて~……⁈……⁇ 知らねーよ!ドーシャってお菓子かよ!(チョコランングドシャ等)頂いてきた参考書をブン投げたくなったのだが、勉強するうちに自分がアーユルヴェーダのピッタ(火気質)、ヴァータ(風気質)、カパ(水気質)のどれなのか判ると、面白いことに自分の気質ごとにドーシャを増やす要因を気を付けるようにしたら気分や体の不調がよくなり、サロンワークでお客様にアーユルヴェーダを話せば話すほど大好評で、勉強したことを話しているうちに覚えることもできた。アーユルヴェーダは紀元前8世紀ごろに始まり、その後の中国医学やギリシャ医学に大きな影響を与えたと参考書に書いてあったが柳井は身をもって長い歴史で培われたアーユルヴェーダの効果に納得した。

 しかし、学科試験に受からなければ意味がない。柳井は独自のテスト対策問題集を作り田中や大東、馬場に渡した。柳井の自信作で大事な所がすべて覚えられるように網羅された完璧な問題集だ。柳井は作った本人であるからすでに全問正解レベルまで仕上がっていた。「ユキさん凄いですね。僕半分もわかりません」後輩の田中が言う。田中は尊敬できる後輩であるが暗記は苦手なようで苦戦していた。馬場も少々苦戦、先輩の大東はもともと知的なタイプで問題ないようだった。「みんなの役に立ってよかった」柳井は安堵した。

 そして、本番当日4人は早朝の新千歳空港に到着、今回も柳井がスケジュールを組んだ。「まず着いたら味噌煮込みうどん食べて、味噌の大豆からトリプトファンを摂取します。トリプトファンを効率よく脳内へ運ぶには、食事のときに炭水化物を一緒に摂取したほうが効率が良いからうどんは完璧です。美味しい食事によって、セロトニンの原料となるトリプトファンを摂ることでセロトニンが出て緊張感をほぐしリラックスして大事な本番をしっかり乗り切り、そのあとは栄で手羽先食べて飲んでお疲れさん会をして栄で泊まり、翌日名古屋城観光とひつまぶし食べ、中部国際空港に温泉あるから風呂入って帰ります」なんという事でしょう! 3カ月の猛勉強で柳井は完璧な栄養学に基づいた素晴らしいスケジュールを組みました。前回の弾丸ツアーから、スパニスト勉強により試験本番前の食事にまで気を配るという成長をしたのです‼

 そして、飛行機に乗り込んだ4人は柳井と馬場、大東と田中で分かれて2列シートに座る。まじめな柳井は馬場と柳井作成問題集の勉強に励む。途中、後ろに座った田中から「結局僕ユキさんの問題集点数悪いです。参考書と別でもらった資料のほうばっかり読んでます」と言われる。
 大丈夫か健? 柳井は少し田中健の仕上がり具合に心配になる。

 離陸を終え、シートベルト着用サインが消えて、柳井はキャビンアテンダント(CA)に話しかけられる。「離陸前からすごい熱心にお勉強されていますよね。何かの試験何ですか?」 
 
 最初から対面しているなら大丈夫ですが、ふいにいきなり声をかけられて振り向いたときは、あなたが女性なら超イケメンだったり、あなたが男性なら超美人だった時に一瞬テンパった経験皆様ないでしょうか? 

 柳井は振り向くと、超美人に話しかけられて心臓が飛び出そうなくらいテンパり、せっかく覚えた試験問題の答えが一瞬で頭から消去された。
「はっはい自分は愛知へ行き、ヘッドスパの頭皮の資格を取りに、このようにしっかり勉強し愛知へ行きます」と柳井はテンパって旧日本兵のような口調で愛知を2回言った。
 
 そして、愛知について味噌煮込みうどんの店でトリプトファンと炭水化物を摂り、試験本番会場へ向かう。

 そして、本番! まずは学科である! 問題用紙と、解答用紙が配られる! その瞬間柳井の目が大きく見開かれた‼

 「何? 問題ってこっちかよ‼うわーやっちまった! みんなゴメン‼」

 やばいぞ! その言葉が脳裏に浮かぶ……