利益を出す仕組みづくりへの挑戦

第九話 売上が上がっているのに利益が出ない! 美容室ビーアンビシャスの利益を出す仕組みづくりへの挑戦

スタッフ5人になり、客数と売上高は大幅に上がったが固定費・変動費の増加で利益が減ってしまった美容室ビーアンビシャス。その中でも、5人になって15坪3席では足りなくなり店舗拡張によって30坪6席になったことでキャパは増えたが家賃が上がった事、人数が増えたので新規客を呼び込むために広告費を上げたのが利益減少の原因であった。
 
 また、最初のオープン時に400万(7年払い)、拡張時に300万(5年払い)の融資を受けているため長期借入金の返済が月に12万ほどになっているのもキャッシュフロー悪化の一因であった。
 
 利益は月に大体20万~30万、この利益から家族5人を抱える柳井の給料が捻出される。もちろん帳簿の損益計算書での数字上の利益である。しかし損益計算書では現金の出入り、つまりキャッシュフロー(借入金の返済やカード払いのお客様の売掛金の回収等)が見えない。柳井はキャッシュフロー計算書を見るが、見る見るうちに預金残高は減り、このままいくと1年ちょっとで、帳簿上黒字でもキャッシュフローが悪化し現金がショートしてしまう事に気づく。

 ここにきて、改めて開業時の料金設定や損益計算書だけ見て、利益が出た出た♪と浮かれていた開業1、2年目の自分がなんと無知で浅はかな考えをしていたのかと情けなくなった。

 しかし拡張は5人体制である以上必要なことであった。そこで、見直すべきなのは大手美容室検索サイトの広告費である。柳井とアシスタント×2の3人体制の時は、月に7万のコースで新規客が月に10人程で費用対効果はまずまずだった。
そしてスタッフ2人増え5人になり予約キャパに余裕が出来たため新規客を呼び込むために30万~のコースにグレードアップし、検索サイトの上位ページに表示されるようになり新規客は一気に月に30人~40人に増えたのだが、クーポンの割引を大きくしたこともあって、客単価が逆に6000円後半から6000円前後に下がり、これが費用対効果の悪化を招いていた。
 しかし年間契約の為いきなり来月からプランをグレードダウンしてコスト下げますということはできない。
 そこで柳井は、検索サイト内の自社のページ内容を見直し、検索サイトを訪れた人が自店に行ってみたいと思われるようにしなければならないと考えた。

 美容室ビーアンビシャスのページをもう一度見直すと、カットは~、パーマは上質の薬剤を~、カラーはダメージ最小限で~と書いてある。しかし、これはどこのお店でも掲載している内容であり目を引くものではない。スパの内容も載せてはいたが、せっかく愛知まで資格を取りに行ったスパニスト資格に当時の柳井は、やはり美容師はカットやパーマやカラーが主体であくまでもスパは付加価値メニューと捉えていたため本腰を入れて取り組んでいなかったので、スパは月間20人前後しか施術していない状態だった。
 しかし、このままでは他の店と比べて埋もれてしまう。駄目だ! うち独自のスパメニューをメインに打ち出そう……と思い直した。
 
 そこで柳井はスタッフにも、スパの資格を取らせようと思ったのだが、愛知のメーカー本社までスパニスト資格を取りに行かせるのは交通費+講習費かかり金銭的にも厳しい。
 
 しかし、ちょうどグッドタイミングで柳井が取ったスパニスト資格が札幌で取れる事になった。
 ヘッドスパというメニューが美容室で始まりだす前から頭皮ケアに注目し10年以上検証してきた札幌円山の美容室【オウラ】の藤山もと子先生がスパニスト資格の上位資格であるスパニスト講師資格を取得したためである。
 オウラは藤山夫婦とスタッフ二人のお店で、頭皮ケアでは実績、歴史ともに札幌最先端のお店である。もともと、藤山夫婦と知り合ったのはプチ社(第4話参照)の能森先生の講習の後の親睦会で、「これからは髪だけのケアではなく頭皮が大事だ」とおなじスパニスト資格を持つ仲間同士すぐに意気投合し、それからは柳井と後輩の田中と藤山夫婦で勉強の為集まることが多くなった。
 柳井はすぐにオウラ主催の札幌スパニスト講習に申込みスタッフに資格を取らせた。そして、講習ではスパニスト資格の内容だけにとどまらず、料金や打ち出し方やスパの際の演出効果等、オウラが長年培ってきたノウハウをも学べる内容で、柳井も手伝いで参加し大いに勉強になった。

 スタッフも能森先生のわかり易い座学と藤山もと子先生のわかり易い実技の講習を受けて、試験勉強と実技の練習を熱心に頑張り無事スパニスト試験を合格した。
 そして、スパニストになってより自信がついたのか、スタッフが積極的にスパを勧めだし美容室ビーアンビシャスの客単価は一気に上がり、6000円前後だった単価は常に7000円~となり、月間30万ほどの利益アップになったのだった。
 新規客数は思ったほど増えなかったが、単価アップで広告費の費用対効果も良くなった。
 利益は50万~70万ほどになり、当面の危機は脱した! 
 さらに、しばらくすると大手美容室検索サイトの効果も出てきて、スパメニューの人気が出て新規客も月間40人~に増えだした。月間のスパ施術数は100人に届く勢いであった。 

 大手美容室検索サイトは集客に限ると最強である。
 しかし、力あるものに依存すれば、力あるものに従わざるを得なくなる。